等身大の東京デート事情:1-①六本木

スポンサーリンク
未分類

東京で飾らない、ありのままのデートを小説として紹介します。
紹介する場所は現実のものですが、人間関係は創作の部分も。
現実と創作のマリアージュを召し上がれ。

 

「じゃあ先輩、文喫に行きましょう!」

休みの予定が無いため、同じく予定の無さそうな後輩に声をかけてみたところ、こんな提案をされた。

「文喫」
聞きなれない単語が耳に入るが、予定が埋まるならそれでいい。
集合を11時に決め、僕たちは週末を迎えた。

待ち合わせは六本木。
普段あまり近寄らないエリアまでの道のりに、途中で乗り換えを間違えながらも、地下鉄の地上口へと出ると、後輩の姿が目に入った。

平日はオフィスカジュアルな服装を身に纏い、落ち着いた茶色い髪を結びがちな彼女だが、今日は明るい色のワンピース姿で髪をおろしていた。



「ごめん、待った?」
「いかにもデートみたいな台詞から始まりますね!」

変に興奮する後輩は、挨拶もそこそこに僕の少し前を歩き始めた。
なんだか頬が紅く見えるのは、いつもとは違うお化粧なのだろうか。
ズンズンと後輩は歩いていく。この勢いでどこまで行ってしまうのだろうか。

 

「先輩、ここですね!」


http://bunkitsu.jp/


歩いて1分もないだろうか。目的地の「文喫」にすぐ到着した。



「ここは本屋じゃなかったっけ?」
「最近変わったみたいですよ?」
「ごちゃごちゃしていて好きだったんだけどなぁ」
「過去は振り返れません。さあ、切り替え切り替え!」

 

1階の入口を入ると、少しだけ本を販売している箇所があり、その奥から「文喫」の本体が始まるようだった。

 

「それで、文喫とはなんなの?」
「たくさん本を読みながら、珈琲なんぞを楽しむ大人の図書館、といったところでしょうか」
「はあ、なるほど」

 

なんとなく分かったような。

 

後輩に導かれるまま受付を済ませ、僕たちは店内を巡った。

店内は多くの本に囲まれ、図書館のようなスペースもあれば、ソファが置かれくつろぎながら本を読めるスペースもある。

とにかく、本を読んで時間を過ごす、という場所のようだ。

 

お互いに近くの席を確保し、あとは適当に本棚を物色していく。
適当に見つけた雑誌を手にして席へ戻ると、すでに後輩はいくつかの小説とともに読書の世界へと入っていた。

カフェとは異なり、皆が読書に没頭している。
多少の会話こそ聞こえるものの、囁きとページのめくれる音が空気の中で流れていた。

しばらくして、僕は後輩に話しかけた。

 

「一ついいかな」
「なんでしょう?」
「どうして君はここを選んだの?」
「先輩は本が好きですよね。私も本が好きです。だから、ここはぴったりかと思って」

 

なるほど。彼女は僕のことを考えてくれたらしい。そのうえで僕はこう続けた。

 

「君の気持ちはとても嬉しい」
「ふふふ。私も結構デキる女でしょう?」
「うーむ。ただ、ここはデートには向かないのではないだろうか?この空間ではなかなか話が出来ない」
「確かに、それは私も少し気になっていた部分ではあります」

 

彼女は彼女で引っかかっていたらしい。なんだか申し訳なかった。

 

「でもね、先輩」
「なんだろう」
「デートに置いて、本は何を読むかじゃありません。誰と読むかですよ」
「なるほど。さっぱりよく分からない」

 

結局、2時間ほど好きなようにお互い本の世界に浸ることになった。
時折、隣の後輩を覗くと本の世界から夢の世界へと移っていたようだが、彼女なりに幸せな時間は過ごせていたらしい。

 

13時過ぎ、お腹もすっかり空いている。
後輩を見ると、空腹により彼女の目からは光が失われつつあった。

文喫の中でもランチの注文はできるようだったが、せっかくの晴天だったので、僕たちは外に出ることにした。

 


「私、ハンバーガーが食べたいです」
「おお。じゃあ、探してみようか」

 

僕たちはハンバーガーを求め、近くの商業施設へと入ることにした。

つづく……

 


◆◆紹介した場所

◆エリア:六本木
◆文喫 http://bunkitsu.jp/(地下鉄日比谷線・大江戸線 六本木駅)

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました