東京で飾らない、ありのままのデートを小説として紹介します。
紹介する場所は現実のものですが、人間関係は創作の部分も。
現実と創作のマリアージュを召し上がれ。
「じゃあ先輩、文喫に行きましょう!」
休みの予定が無いため、同じく予定の無さそうな後輩に声をかけてみたところ、こんな提案をされた。
「文喫」
聞きなれない単語が耳に入るが、予定が埋まるならそれでいい。
集合を11時に決め、僕たちは週末を迎えた。
待ち合わせは六本木。
普段あまり近寄らないエリアまでの道のりに、途中で乗り換えを間違
平日はオフィスカジュアルな服装を身に纏い、落ち着いた茶色い髪
「ごめん、待った?」
「いかにもデートみたいな台詞から始まりますね!」
変に興奮する後輩は、挨拶もそこそこに僕の少し前を歩き始めた。
なんだか頬が紅く見えるのは、いつもとは違うお化粧なのだろうか。
ズンズンと後輩は歩いていく。この勢いでどこまで行ってしまうのだろうか。
「先輩、ここですね!」
歩いて1分もないだろうか。目的地の「文喫」にすぐ到着した。
「ここは本屋じゃなかったっけ?」
「最近変わったみたいですよ?」
「ごちゃごちゃしていて好きだったんだけどなぁ」
「過去は振り返れません。さあ、切り替え切り替え!」
1階の入口を入ると、少しだけ本を販売している箇所があり、その奥から「文喫」の本体が始まるようだった。
「それで、文喫とはなんなの?」
「たくさん本を読みながら、珈琲なんぞを楽しむ大人の図書館、といったところでしょうか」
「はあ、なるほど」
なんとなく分かったような。
後輩に導かれるまま受付を済ませ、僕たちは店内を巡った。
店内は多くの本に囲まれ、図書館のようなスペースもあれば、ソファが置かれくつろぎながら本を読めるスペースもある。
とにかく、本を読んで時間を過ごす、という場所のようだ。
お互いに近くの席を確保し、あとは適当に本棚を物色していく。
適当に見つけた雑誌を手にして席へ戻ると、すでに後輩はいくつかの小説とともに読書の世界へと入っていた。
カフェとは異なり、皆が読書に没頭している。
多少の会話こそ聞こえるものの、囁きとページのめくれる音が空気の中で流れていた。
しばらくして、僕は後輩に話しかけた。
「一ついいかな」
「なんでしょう?」
「どうして君はここを選んだの?」
「先輩は本が好きですよね。私も本が好きです。だから、ここはぴったりかと思って」
なるほど。彼女は僕のことを考えてくれたらしい。そのうえで僕はこう続けた。
「君の気持ちはとても嬉しい」
「ふふふ。私も結構デキる女でしょう?」
「うーむ。ただ、ここはデートには向かないのではないだろうか?この空間ではなかなか話が出来ない」
「確かに、それは私も少し気になっていた部分ではあります」
彼女は彼女で引っかかっていたらしい。なんだか申し訳なかった。
「でもね、先輩」
「なんだろう」
「デートに置いて、本は何を読むかじゃありません。誰と読むかですよ」
「なるほど。さっぱりよく分からない」
結局、2時間ほど好きなようにお互い本の世界に浸ることになった。
時折、隣の後輩を覗くと本の世界から夢の世界へと移っていたようだが、彼女なりに幸せな時間は過ごせていたらしい。
13時過ぎ、お腹もすっかり空いている。
後輩を見ると、空腹により彼女の目からは光が失われつつあった。
文喫の中でもランチの注文はできるようだったが、せっかくの晴天だったので、僕たちは外に出ることにした。
「私、ハンバーガーが食べたいです」
「おお。じゃあ、探してみようか」
僕たちはハンバーガーを求め、近くの商業施設へと入ることにした。
つづく……
◆◆紹介した場所◆エリア:六本木
◆文喫 http://bunkitsu.jp/(地下鉄日比谷線・大江戸線 六本木駅)
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